おぼえがき

なにをかいわんや

萩尾望都の「一瞬と永遠と」の話

アーカイブスです。お仕事で若い人向けに「読書・本について」の文章を書いたときにボツにした文章が出てきた。無編集なのでですますです。

 

 

好きな人が書いた文章を読む

一番最近買った本について話をします。先日「一瞬と永遠と」という本を買いました。漫画家の萩尾望都による短編エッセイ集です。萩尾望都は私の一番好きな漫画家で、1970年代に発表された「トーマの心臓」「ポーの一族」を皮切りに、2016年の現在でも、読み終えると「ううっ…」と感嘆してしまうような、心にぐっとくる作品を発表しています。「メッシュ」と「トーマの心臓」が特に好きで、何度も読み返しています。

 

エッセイである本書は、氏の漫画作品とは違った読感が得られます。漫画においては、何層ものフィルターにかけ、精査された表現によって構成された作品世界の中に没入することができますが、エッセイでは濾過されきっていない部分があるというか、雑音や余白を感じられます。文章の中に生身の人間らしさがあるのです。しかし、やはり、表現媒体が変わっても、語調や言葉選び、ものの捉え方、考え方、リズムや構成から、確かに本人だと感じるエッセンスがにじみ出ています。


また、本書の中には、漫画作品と結びつけて楽しめるエピソードが散見されます。家族や周りの人との関係、好きな本の話、旅先での出来事、等々…。この体験があの作品に繋がったのだろうか、あの場面の背景にはこんな思いががあったのだろうかと想像しながら読むと、わくわくします。

いろんな楽しみ方ができる本なので、萩尾望都作品が好きな方は読んでみてください。

そうでなければ、皆さんが素敵だと思っているあらゆるジャンルの作家、イラストレーターやミュージシャンが、なんらかの文章を発表しているのなら、それをぜひ読んでみてください。文章から本人に思いを馳せるという点で言えば、インタビューや対談より、エッセイや小説の方が、ひとりで書いているぶん、濃度が高くて面白いです。
好きな人が書いた文章を読むということは、その人の人間的な部分を垣間見ることができ、楽しい発見のある読書体験になります。きっと、創作活動のヒントにもなります。

 

 

まとめ

読書っていいね