おぼえがき

なにをかいわんや

「少年たち」は(ネタバレします)

映画「少年たち」を観た。やった〜!感想を書きます。

私の立場は八乙女担で事務所担、Jrに関してはツイッターでフォローしているデビュー担の方々の中でJrに関しても発言する人のツイートで把握している程度です。かなりセンセーショナルな話題がない限り、自ら情報収集はしてないです。松村北斗くんは好みなので、SixTONESは気にして贔屓目に見ています。

 

 

前評判どおり、兎にも角にもオープニングが素晴らしかった。ジャニーズ楽曲の「あの感じ」とパフォーマンスの素晴らしさが存分に味わえて、これだけで観る価値がある!

主人公の京本くんが刑務所に入所する。所内を歩いて行くのを追っていくカメラワークの長回しで、物語の舞台を紹介する。各房の面々があちこちから躍り出てきて、順番に顔見世していく演出がめちゃくちゃ楽しい!

この映像だけで本作の本気度と実力が伝わってきて、「この後何が起きても絶対にこの話から逃げないぞ…」(?)という決意を固めることができた。

物語の舞台が素晴らしいパフォーマンスとともに紹介され、観客の観る意欲が上がっている状態で、本編と全然関係ないけど代表曲やっとくか!という感じで「JAPONICA STYLE」とかやるのも唐突だけど、上がったテンションそのままに楽しめて最高。ジャニーズ舞台ではあるあるだったとしても、通常の舞台では関係ない曲を突然ぶっこむことはあり得ないので、よく考えれば結構変わった鑑賞体験になる。物語に対して独特な距離感になる仕掛けになってて面白い。

距離感が変だという話として、舞台が「奈良少年刑務所」なのもそれだ。

ロケ地が奈良という現実を踏まえていて、そこは架空の刑務所名にした方が物語に没入できるやん?なのに、現実と紐付けてるのもどういう意図や匙加減なのか分からない。最後まで飽くまで奈良で起きた話として一貫してるのなんかヤバい。奈良がヤバい。関西在住の人間としては、えっ近場じゃん…って思う。

 

歌ってる間、画面上に歌詞中の語句(「愛」とか)のワードアートがバーーン!と浮かんでくる演出は、ヤンヤンジャンプで死ぬほど観てて、すげー好きなのでテンションあがった。強調したい語句が浮かび上がってくるスタイル。なおストーリーとは直接的には関係ない。なんの伏線でもヒントでもない。唐突かつ意味のわからないメッセージや展開に慣れているJUMP担。

それ以外にもJUMP担のアビリティとしてドラマティックで混沌としているストーリーが力技で展開していく現象にしがみつく体力が、サマリーのDVDをしつこく観たおかげでついている気がする。ジャニ筋がある程度鍛えられている。JUMPは結構事務所のコアな感覚をしっかり踏襲しているグループなんだな…と思う。レヴューが似合うし。

 

色んなレポを読んで先入観があったのだが(だからこそ劇場まで足を運ぶことを決めたので良い)この冒頭が良すぎて、すっかりフラットな「ジャニーズは最高だな!」状態に戻されてから、本編が始まった。

 

本編のあらすじは重要ではなく、登場人物みんなに確かな良さや個性があるけど刑務所という場所柄、暗い過去や事情を抱えている…という設定が上手くできている。刑務所であることは必然なのだ。

良さ方面は全員表面的かつアイドル的でわかりやすい(ケンカが強いリーダー、インテリキャラ、冷静な情報通、笑顔が素敵、世間知らずでおバカ等)のだが、各キャラクターの暗黒面がお茶飲んでたら吹き出すレベルで闇深くてパンチが効いてる。内容的に普通に受け止めたら引く。

 

個人的に最凶だと思ったのはエガオ(高地くん)の過去である。エガオはもともと気弱な学生で、ヤンキーグループに日常的にイジメを受け、頻繁にカツアゲられまくっていた。

ある夜、山道のガードレール付近(六甲山のビュースポットみたいなとこ)に呼び出され、いつも通りヤンキーに現金を手渡す…

と見せかけて、隙をついて手際よくロープをとりだし、ヤンキーの手首を素早く縛り上げる。(え〜〜)

あ、これはガードに腰掛けているヤンキーを断崖に突き落とすな…シンプルですわ…と思ってたら、そのロープをバイクのケツに括り付けて発進、ヤンキーをバイクで引き摺り回すという西部劇でしか見たことない制裁を食らわした。(え〜〜〜)

ヤンキーにえげつない仕打ちをしているエガオは、バイクの運転をしながら始終満面の笑顔である。エガオ、キャラクターとして一番怖くないか???

 

この作品自体、かなりの当て書き感がある中で、当然贔屓しちゃう北斗くんのダイケンの過去もなかなか味わい深かった。

ダイケンは能力が高く、部活も成績もイケイケな学園のヒーローだった。しかし家庭の事情で、痴呆になってしまった祖母の介護をすることになり、これまでの学校生活で築いた功績を手放すことになる。

上昇志向・自己実現と家族への愛情や長男としての責任に板挟みになってさぞ辛かろう…と既に心が痛い。新しいものを手に入れることと、今あるものを守ること、どちらも切実なのだ。ダイケンは大人じゃなくて高校生。クローズドな状況に足をとられてしまう。悲しく無力な立場だ。

ある日、祖母が家から抜け出し、あわや電車に轢かれそうになる。踏切に入ろうとする祖母を必死で押さえつけ惨事は免れたが、さぞ生きた心地がしなかっただろう。祖母がミンチになるイメージが脳裏を掠めただろう。それでも学校に行く。身内が死ぬかもしれなかった日なのに。きっとどうしても学校には行きたいのだ。

憔悴して席に着くと、遅刻をはじめとした最近の成績や部活のふるわなさを教師に責められる。この学校な…いや、それ以前に保護者…おまえなー。情報共有しろよ、息子の立場を守れよ、こんなんでどんな気持ちで学校行ってるのか考えろよ…と個人的に思う。学校と家庭で認識のギャップがあってはいけないでしょ…などと思っているうちに、叱責に耐えかねたダイケンが思わずその辺にあったハサミで教師の腹を刺す。阿鼻叫喚の教室。この瞬間にダイケンはどんだけのものを失ったのか…ああ辛い…。

 

ダイケンは刑務所で教師のように人に勉強を教え、粟田(京本くん)の絵を褒め、エンパワーメントをする。

エガオはどんな時でも笑っていて他のメンバーにエガオとあだ名され、周りに元気を与えている。狂った瞬間と、狂う前の人格が、刑務所内でのキャラクターになって混在しているのめちゃくちゃ闇が深い。

刑務所内では、皆なりたい自分としての人格を運用しているのかもしれない。

京本くんだけが場当たり的な情報に振り回されているのはとても主人公らしい。ニューカマーの特権だ。

 

キャラクターの描写は勘ぐればいくらでも想像出来る濃さがあるが、メインストーリーと演出はライトだ。知らん間に何かが起こっては収束してるので、全員振り回されてる感が強い。それぞれに能力や思いがあるんだけど、メインストーリーの筋書きを変えるほどの力をもたない。「英雄的な誰かがいたから何かが出来た!」という構図にならず、ヒーローがいない。場合によっては簡単に死ぬ。いや死ぬのかよ。医療刑務所と脱獄に関しては特に感情移入はないです。脱獄はドタバタ劇でかわいくて面白かったです。

群像劇がもともと好きなので、このドライさはいいと思う。それぞれが色々ある中で、大きな筋書きに結局のまれる無常観は良い。誰が関わっていても変わらない話の中で、それぞれがどう関わり、どんな思いになり、このストーリーが終わった後にどうするのかが保証されていない方が観ていて楽だ。その方が押し付けがましくなくて良い。解釈が委ねられている。

 

そういうわけで、数年後、刑務所がなぜショーが売りのホテルに改装されたのかはもうマジでどうでもいいし、元受刑者の多数が奈良市内で働いてることもマジでどうでもいい。いやまじでなんなんこの話。

飛行機の距離の遠方から横山さんが奥さん連れずに息子と2人で元刑務所ホテルに来るまでの経緯も考える必要はない。どういう気持ちで刑務所時代のことを受け止めてんだよ、ということを考える必要はない。とにかく息子(自分がかつていじめたくっていた年頃の少年)と一緒に来るしか選択肢はないのだ。

 

ラストに大河のノートを受け取り、中身を確認し、ベンチで意識を失う?横山さん。

一緒に観に行った人に「あれは死んだの?」って聞かれたけど知らん!死んでるかもね!

 

そしてエンドロール。最高だった。オープニングの長回しと同じカメラワークでコミカルバージョンのパフォーマンスをするキャストたちはやはり素晴らしい。いいものを観た。ここで伏線回収。粗暴で不幸な少年などいなかったのだ。

出のタイミングやカメラワークを体に叩き込んで、演技のバリエーションを変える。この実力と本気度と、楽しさが素晴らしい。陰鬱ともとれるストーリーから観客を救い上げる役割は別にしていない。そもそもこっちは救われたいほど落ち込んでない。

 

語弊があるが、ジャニーズは歌って踊ってかっこよくて、見てるとすごいなあ笑顔になれるなあ、誰かしら感情移入できる人がいるなあ、そして楽曲がゴリゴリにジャニーズ節で聞き馴染みがあって安定してよいなあ、湧くべきところでまんまと湧ける!(ミュージカル映画で曲が刺さらないと、とてもつまらないのでこれは非常に大事)と思うことが見所なんだと実感する。リアリティや整合性など求めていない。むしろ違和感や勘ぐりの余地があるほど楽しみ方に幅が出る。

そして手段をえらばず、こんなことが起きるのかよ…という気持ちを味わわせてくれることが最大の良さだと実感した。予想外のことが起きない作品は観ていても仕方ない。色々めちゃくちゃな展開でも演出でも、予想外が起きることはそれだけでエンタメだ。

そういった意味でジャニーズらしさや良さがふんだんに詰まっていて、めちゃくちゃ面白い映画だった。

 

最後のジャニーさんからのメッセージ「子供は大人になれるけど、大人は子供に戻れない」が、簡明かつきっちり総括してて、かつなんだか残酷なような気がして、マジで素晴らしいな。。と思った。生き方が研ぎ澄まされてる。。

「少年たち」は、なんらかの楔を打たれて、子供のままでいることを余儀なくされた人物たちに起こった出来事を描いている。大人になっても少年のままでいざるを得ない楔を打たれた経緯を描いた作品だと思う。なんか変な体験しないと順当に大人になっちゃうからなあ。これは呪いの物語かもしれない。監獄は心の中にある。

 

 

まとめ

色々うろ覚えだし、素晴らしいオープニングを大画面で観るために、もう一回観に行きたい。情報量が多い。マジで面白かったです。

マネキンの踊りも無駄に能力が高くて良かったです。というか動きのあるパフォーマンスは全部良くて、ジャニーズ事務所の価値観と本気具合がビシビシに伝わってくるので、一見の価値ありだと思います。